この記事は『WAI-ARIA対応のタブ型UIを実装する方法』の続きです。
WAI-ARIAはアクセシビリティーの改善に役立つと先の記事で紹介しました。この記事ではWAI-ARIAに対応したReactでのタブのユーザーインタフェースを解説します。
サンプルをGitHubにアップしているので、デモとソースコードをご覧ください。
前提として、create-react-appを使って環境構築したものとします。
create-react-appを使っていなくても、記事「最新版で学ぶwebpack入門 - BabelでES2018環境の構築(Reactのサンプル付き)」で紹介しているようにwebpack等で環境構築されていても構いません。
Reactでのステート管理
実装の要素としてstate
に選択されたタブのIDを保持することとします。
▼ステート定義の部分の抜粋
// ステートを定義
const [state, setState] = useState({
tab: 'panel1',
});
※コードは抜粋で掲載しているので、コピーする際はGitHubの「app.js」を参照ください。
HTMLの実装
HTMLの実装を紹介します。このコードは関にJSXで書いています。
▼JSXの部分の抜粋
<div>
<ul role="tablist">
<li role="presentation">
<button role="tab"
aria-controls="panel1"
aria-selected={state.tab === 'panel1'}
onClick={handleClick}>
カベルネ・ソーヴィニョン
</button>
</li>
<li role="presentation">
<button role="tab"
aria-controls="panel2"
aria-selected={state.tab === 'panel2'}
onClick={handleClick}>
メルロー
</button>
</li>
<li role="presentation">
<button role="tab"
aria-controls="panel3"
aria-selected={state.tab === 'panel3'}
onClick={handleClick}>
ピノ・ノワール
</button>
</li>
</ul>
<div role="tabpanel"
id="panel1"
aria-hidden={state.tab !== 'panel1'}>
カベルネ・ソーヴィニョンはブドウの一品種。赤ワインの中でも渋くて重い味わいが特徴です。
</div>
<div role="tabpanel"
id="panel2"
aria-hidden={state.tab !== 'panel2'}>
メルローはブドウの一品種。味はカベルネ・ソーヴィニョンほど酸味やタンニンは強くなく、芳醇でまろやかで繊細な味わいです。
</div>
<div role="tabpanel"
id="panel3"
aria-hidden={state.tab !== 'panel3'}>
ピノ・ノワールはブドウの一品種。カベルネ・ソーヴィニョンと対照的で比較的軽口な味わいです。
</div>
</div>
※説明の簡略化のためにRedux等は利用せずに解説しています。またリストの項目は動的に実装できそうですが、あえて静的なJSXとしてコードを書いています。
HTMLコーディングのポイントとしては次の通り。
- 期待どおりに読み上げられるように
role
属性を適切に利用します - タブとして機能するように、
ul
要素にrole="tablist"
、 タブ部分となるbutton
要素にrole="tab"
、 パネル部分のdiv
要素にrole="tabpanel"
を追加します- 慣習にしたがって
ul>li
でマークアップしましたが、読み上げの支障となるのでli
タグにはrole="presentation"
を指定してます(もしかしたらタブUIにul>li
を使う必要はないかもしれません)
- 慣習にしたがって
- タブ側のボタンは
a
要素ではなくbutton
要素を使ってます。macOS Safariだとa
タグはデフォルトでタブキーで操作できないためです。Safariでは次のように「Tabキーを押したときにウェブページ上の各項目を強調表示」を選択すると、a要素もタブキーで選択可能になります。ただ、このオプションを設定していなくてもタブキーで選択されたほうが望ましいと考えてのことです
JavaScriptとReactに絡んでくるポイントは次の通り。
- タブとなる
button
要素とパネルのdiv
要素の関連性を示すためaria-controls
属性を指定します。値は任意でid
属性を指定します button
要素にタブの選択状態を伝えるために、aria-selected
を真偽値で指定します- Reactのステートの値で動的とします。こうすれば半自動的に
aria-selected
属性が切り替わります
- Reactのステートの値で動的とします。こうすれば半自動的に
- パネル部分が表示・非表示の状態を伝えるために
aria-hidden
属性を真偽値で指定します
ボタン要素のイベントハンドラー
ボタン要素のイベントハンドラーのコードを紹介します。ボタンとパネルの紐付けは、意味的に合致している aria-controls
属性を利用してます。JavaScriptの制御が必要なものは独自の変数ではなく、可能な限り aria-*
属性で代替するのがベターなやり方と思います。なお、React Hooksを使って書いています。
▼イベントハンドラーの部分の抜粋
// クリックしたときのイベントハンドラーです。
const handleClick = useCallback((event) => {
// イベント発生源の要素を取得
const element = event.currentTarget;
// aria-controls 属性の値を取得
const tabState = element.getAttribute('aria-controls');
// プロパティーを更新
setState({
tab: tabState,
});
}, []);
CSSの実装
CSSはなるべく class
属性を使わず、aria-*
属性をセレクターとして指定しています。こうすれば、余計なクラス属性を増やす必要がなくなります。
/* UI制御のための指定 */
[aria-hidden="true"] {
display: none;
}
[aria-hidden="false"] {
display: block;
}
[aria-selected="true"] {
background-color: royalblue;
color: white;
}
※コードは抜粋で掲載しているので、コピーする際はGitHubの「App.css」を参照ください。
CSSの実装はCodeGridの記事「WAI-ARIAを活用したフロントエンド実装」で紹介されている「aria属性をCSSセレクターとして利用する」「独自に名前を付けるくらいなら、意味的に合致するaria属性を利用して、アクセシビリティーを確保しましょう」の提案をアイデアとしています。
まとめ
Reactで実装する場合はタブの状態はいずれかのstate
かprops
で管理しているはずです。その値を間借りしてaria-*
属性に適用すれば、簡単にアクセシビリティーを向上できます。これは一例に過ぎません。さまざまなユーザーインターフェイスに利用できるので応用くださいませ。
昨年の記事「脱jQueryのためにしたこと」でも紹介したように、これらのJSライブラリとWAI-ARIAの相性は抜群です。Reactユーザーがほんの少しWAI-ARIAの理解が進めば、簡単に利用できるでしょう。この記事によって、音声読み上げを求めているエンドユーザーへの配慮が少しでも進めばと考えています。
この方法はAngularやVue.jsでも実装できます。詳しくは次の記事を参照ください。
補足
記事を作成するにあたり複数のサンプルを用意して音声読み上げソフト(macOSの「VoiceOver」や「NVDA日本語版」)で検証しました。